2012年10月3日水曜日

知財業界のソフトウェアに思う

■はじめに

IT業界におけるソフトウェアの進化には目を見張るものがあり、ここ20年の間にソフトウェアの品質(使い易さや機能)は大幅に改善されたように感じています。

 少し昔話になりますが、多くの人がコンピュータを扱うきっかけとなったであろうWindows95の頃は、ソフトウェアは「たまにはバグでエラーを発生させる」のが当たり前のような雰囲気があったのではないでしょうか。また、ソフトウェアで「何かができる」というだけでも何か凄いことのように感じられたのではないでしょうか。
 翻って、現在においては「バグで落ちるなど論外」、「何かができるのは当たり前」と考えるのが一般的かと思います。
 この20年の間に、IT業界において何が起きたのでしょうか?

 その背景には、ときには過剰と思えるまでの過当競争があると思われます。より掘り下げて見れば、開発手法や品質の管理手法といったソフトウェアの作り方自体が、すなわちソフトウェアの生産性が改善され続けていることが挙げられると思います。
 生産性の大幅な改善により、今となっては特段能力を必要としない『(単に)仕様を満たすだけのソフトウェア』を作る時代は終わりを告げ、さらに一歩踏み込み『使い易さ(今風に言うならば、ユーザー・エクスペリエンス)を考慮したソフトウェア』を作る時代へと進んだと考えられます。




■知財業界のソフトウェア


 一方、知財業界におけるソフトウェアを見渡すと、未だ『仕様を満たすだけ』の前近代的なソフトウェアが少なからず見受けられます。IT 業界が、一時はドッグイヤーと呼ばれるほどに、急成長し続けていることを考慮すれば、2012年現在のIT業界において用いられているソフトウェアの品質と、2012年現在の特許業界におけるソフトウェアの品質とには、天と地ほどの差があります。
 ソフトウェアを日常の移動手段に例えるなら、現在のIT業界が 『自動車や飛行機』 を用いているのに対し、特許業界は、現代において 『蒸気機関車』 を用いている状況ではないかと感じます。
 たしかに、知財業界という特殊な、閉じた業界においては、『過当競争によって目まぐるしく進化する』ということは起こり得ないでしょう。しかしながら、ソフトウェアの制作現場では、数十年前に比べれば劇的に生産性が改善されています。にも関わらず、どうして旧態依然としたソフトウェアが罷り通っているのでしょうか?

 …

■知財業界のこれから


 翻って、昨今の知財業界、ことに弁理士業界においては、標準価格表の廃止、リーマンショック、弁理士数の増加など数々の要因が重なり、価格競争が始まっています。
 このような状況においては、士業といえども、作業の効率化が強く求められるものと思います。

 弁理士が「発明」を守るにあたり不可欠な『「発明」そのものを考える時間』を確保しつつ、いかに作業の効率化を行うかが求められている中、前近代的なソフトウェアで満足していていいのでしょうか?

 自分はそうは思いません。現代において、蒸気機関車に対し高額を払い、手にすることに、一体どれだけの意味があるのでしょうか?蒸気機関車しか売られていない?本当に、他に選択肢がないのでしょうか?

  • 必要十分な機能
  • 使い易さを考慮したユーザーインターフェースとセットにして
  • 価格に見合うエクスペリエンスを提供する

という、現代のソフトウェアのあるべき姿を、知財業界でClockAheadを通じて体現したいと考えます。と、大きなことを言っても、素人の自分のプログラミング能力など、たかが知れています。そんな自分であっても、あるべき姿の片鱗くらいは実現できると考えております。
 それにより、知財業界で働く皆様が

 『ソフトウェアの価値とは一体何なのか?(ソフトウェアの価格は何で決まるべきなのか?)』

を考え始めるきっかけになればと思います。日常において道具を選ぶ上で、ごく当たり前に考えることを、ソフトウェアにおいてもしっかり考える。そんな土壌が培われることを期待しています。

 たとえ過当競争が起きなくとも、
 適切な価格の設定が行われれば、健全な業界の発展が促されるものと信じて。